唐玉美凛(からたま みりん)は泣いていた。
自分の部屋で、教室で、体育館で。
彼女はいつも泣いていた。
頭につける淡い水色カチューシャは、彼女の悲しみの色なのだろうか。
それともそれは、繊細な心模様なのだろうか。
誰も、本当のことは知らない。
近くに座る男子生徒が、無表情な彼女の横顔を見るたびに思う。
アイツは何を考えているんだろう。
それは、自分と同じ空間に存在する異性への好奇心なのか。
それとも、彼女の涙にまみれた心を、揺れるカチューシャに垣間見たのか。
誰も、誰も本当のことは知らない。
ただ、彼女は泣いていた。
唐玉美凛は、泣いていた。